
2026年7月1日現在、暗号資産市場はビットコイン(BTC)の現物ETF(上場投資信託)からの3週連続に及ぶ大規模な資金流出に引きずられ、全体として上値の重い展開を余儀なくされている。直近1週間だけでも17億ドルを超える純解約が発生し、市場全体にマクロ的な天井感が漂うなか、その濁流に逆らって明確な回復トレンド(週次14%超の上昇)を見せているのがStellar(XLM)である。
多くのアルトコインが年初来安値を意識するなか、なぜXLMはこれほどまでに堅調なのか。その背景にある強力な実需のトリガーと、2026年後半の見通しを解説する。
■ 上昇の背景1:MoneyGramによる独自ステーブルコイン「MGUSD」のローンチ
今回の逆行高を支える最大の実需材料は、2026年6月に米国際送金大手のマネーグラム(MoneyGram)が、Stellarブロックチェーン上で独自の米ドル連動型ステーブルコイン「MGUSD」を正式にローンチしたことだ。
これは単なるロードマップの発表ではない。世界170カ国以上、約50万拠点の物理的な現金窓口(リテールインフラ)を持つマネーグラムが、Stellarの高速かつ超低コストなネットワークを決済レールとして直接利用し始めたことを意味している。
すでに20億ドル以上のステーブルコイン決済がStellar上でシームレスに処理されており、投機的なミームコイン相場が冷え込むなかで、価値の移動というブロックチェーン本来の「オンチェーン・ユーティリティ(実用性)」に目を向けたクジラや機関投資家の資金が、XLMへ急速にローテーションしている。
■ 上昇の背景2:コモディティ指定と米国機関インフラへの組み込み
もう一つの強力な後ろ盾は、2026年3月に米国の主要規制当局(SECおよびCFTC)がStellarを「デジタルコモディティ(商品)」として正式に指定・分類したことによる圧倒的な法的一貫性である。
他の中小型アルトコインが未だに有価証券問題の燻るリスクを抱えるなか、Stellarはこの規制リスクを完全にクリアした。この classification(格付け)の恩恵を受け、米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)での先物市場の活況に加え、米国預託決済公社(DTCC)の決済承認トークンへの採用など、ウォール街の伝統的な金融インフラ(RWA:現実資産トークン化)の裏方としてStellarが選ばれる事例が相次いでいる。
■ 上昇の背景3:技術的アップグレード「Protocol 26」の完了と機密機能
技術面においても、5月にメインネットで可決・実装された大型アップデート「Protocol 26(コードネーム:Yardstick)」が開発者やバリデータのセンチメントを大きく押し上げている。さらに、6月末には企業利用の必須要件となる「Confidential Tokens(機密トークン)」のデベロッパープレビューが公開され、エンタープライズ領域における実用性がさらに強固なものとなった。
■ 2026年後半の見通し:ディープバリューからの脱却とレジスタンス突破への道
テクニカル的には、長らく0.15ドル〜0.16ドル近辺の強固なサポートゾーンでエネルギーを溜めていたXLMが、出来高の急増を伴って現在の0.18ドル(約29円〜30円)水準まで上値を伸ばした形だ。
短期的には、これまでの膠着レンジの上限である0.18ドル後半から0.20ドルの分厚いレジスタンス(抵抗帯)を明確に実体でブレイクできるかが焦点となる。相場全体のセンチメント(BTCのETF流出の動向)による一時的な揺り戻しには警戒が必要だが、デリバティブ市場におけるロング・ショート比率が強気に傾き始めていることはポジティブな兆候と言える。
クリプト総研の視点:
現在のXLMの強さは、投機的なブーム(Hype)によるものではなく、ステーブルコインとRWAという2026年の最重要実需セクターにおけるシェア拡大に裏打ちされている。過去数年間、技術力に対して価格が不当に放置されていた「ディープバリュー(割安銘柄)」であったからこそ、全体相場が冷え切った局面で逃避先、かつ実需買いの対象として選ばれた。
2026年後半、現在の規制クリアという優位性を保ったまま、第3四半期に予定されている年次カンファレンスでさらなる大型の政府・多国籍機関との金融インフラ連携が発表されれば、0.25ドルを通過点としてさらなる大化けをみせる可能性は極めて高い。目先のボラティリティに惑わされず、この堅実なファンダメンタルズの拡大を注視すべき局面である。