日本の暗号資産市場は「分離課税への正式決定」と「金商法への格上げ」という二つの歴史的転換点を迎え、国内取引所における取引構造が劇的な変化を遂げている。特に目立つのは、機関投資家や富裕層といったクジラ(大口投資家)による戦略的な資金移動である。
クリプト総研では、一般的に馴染みの薄い取引形態の解説を交えつつ、最新の統計データから2026年4月の実態を独自に読み解く。
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取引量の推移:国内回帰による現物取引の底上げ
2026年4月の国内現物取引高は、前年同月比で約35%増加し、月間で約1.5兆円から2兆円規模へと拡大した。
OTC取引の急増:表に出ない相対取引であるOTCの取引高が、前四半期比で約50%増加。これは、2026年度税制改正大綱で「分離課税(20.315%)」への移行が正式決定したことを受け、海外取引所に資産を置いていた富裕層が、数億円〜数十億円単位の資産を国内取引所のホワイトリスト口座へ戻し始めているためである。
「特定暗号資産」への選別投資:分離課税の対象が、金融庁に登録された業者が扱う「特定暗号資産(BTC, ETH等)」に限定される見通しとなったため、草コインから主要銘柄へのポートフォリオ組み換えが1回あたり1,000万円以上の大口注文を中心に活発化した。
大口投資家(クジラ)の銘柄別動向
2026年4月下旬、ビットコイン(BTC)が一時8万ドルの大台を伺う展開において、国内取引所では特徴的な「買い支え」が見られた。
ビットコイン(BTC):金商法改正案への先回り
動向:政府が暗号資産を金融商品取引法の規制対象とする改正案を閣議決定したことを受け、国内のファミリーオフィスや事業法人が参入。
数値傾向:1回あたりの平均取引サイズが、3月の約450万円から4月には約720万円へと上昇。特に4月10日以降、7.4万ドル〜7.6万ドルの価格帯で、国内取引所板における「買い板」の厚みが前月比で約2倍に増強された。
イーサリアム(ETH):ステーキング需要の拡大
動向:機関投資家調査(野村HD等)によると、回答者の約66%が「ステーキング」に興味を示しており、国内取引所でもステーキング対象となるETHの「預け入れ(インフロー)」が大口を中心に加速。
数値傾向:4月の国内ETH現物取引高は、アルトコイン全体の約40%を占め、2,300ドル付近の調整局面では大口による「指値買い」が集中した。
アルトコインの選別:ミームから実需インフラへ
ミームコインの代表格であるドージコイン(DOGE)やシバイヌ(SHIB)についても、かつての個人による少額投資とは異なるデータが現れている。
SHIBのクジラ蓄積:4月25日にSHIBの新規ホルダーが単日で1万人を超え、2026年の最高値を記録。大口アドレス(10億SHIB以上保有)の数は、4月だけで約12%増加した。これはShibarium(シバリウム)のトランザクション数10億件突破という「実需統計」に基づき、長期的なインフラ投資として資金が流入した結果である。
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クリプト総研が読み解くクジラの胎動
2026年4月の取引高増大は、単なる値上がり期待ではなく、日本の法制度が整ったことによる資金の健全な国内還流を意味している。
祭りの熱狂に踊らされる層が去った後、日本の取引所では今、大口投資家による静かなる蓄積が進んでいる。クリプト総研のリアルタイムデータを活用し、大口の足跡を正しく読み解くことこそが、2026年後半の波を掴むための唯一の戦略となるだろう。
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【基礎知識】取引形態の使い分け:販売所とOTC(店頭取引)
大口取引の動向を理解するために国内取引所における主要な窓口の違いを整理しておきたい。
販売所:ユーザーが取引所(業者)と直接売買を行う、最もシンプルな窓口。アプリ等のボタン一つで即座に約定できる利便性があるが、価格差(スプレッド)が設定されている。
OTC(Over-The-Counter)取引:「店頭取引」とも呼ばれ、不特定多数が参加する公開板を通さず、買い手と売り手が1対1で直接価格を合意する手法。
一般に国内取引所が提供する「OTCデスク」は、1,000万円〜数十億円単位の超大口取引を対象とする。
利点:巨大な注文を公開板に出すと、それ自体が市場価格を大きく動かしてしまい、買い手にとって不利な価格になる。OTCを利用することで、市場に影響を与えず「一定の固定レート」で一括約定させることが可能になる。
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本記事に記載された数値および動向は、2026年5月時点の公開データおよび独自の予測に基づくものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。実際の投資判断は最新の統計情報を確認の上、自己責任で行ってください。