ビットコインは設計段階から金の特性を意識的にデジタルへ翻訳したものです。特に「2,100万枚の上限」は金の地質的有限性に対応する意図的な設計です。
ビットコインの設計上の金との類似性(希少性・検証可能性・無国籍性)は本物で、むしろビットコインは携帯性や分割性では金を超えています。
ここでは、ビットコインと金の価格の相関性とその背景について、過去5年程度のデータに基づいた解説をまとめます。
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フェーズ1:連動期(2022年11月〜2024年11月)
2022年11月から2024年11月にかけて、金とビットコインは比較的強い相関関係で推移し、金が67%上昇する中でビットコインはおよそ400%もの上昇を記録しました。両資産は「法定通貨の価値毀損に対するヘッジ」という共通のナラティブで買われていました。
フェーズ2:乖離の始まり(2025年〜)
しかしこの関係は2025年に崩れ始め、2025年3月末時点で金が16%上昇していた一方、ビットコインは6%以上の下落となりました。
2025年、金価格は60%上昇し、1979年以来最大の年間上昇率を記録しました。一方でビットコインは2025年10月に約12万6,000ドルの高値をつけた後、12月には急落し、2025年末時点でピーク比で大きく下落していました。
フェーズ3:過去最大の乖離(2026年初頭〜3月)
2026年に入り、金とビットコインの乖離は過去最大水準に達しました。金価格は1979年以来最も長期トレンドから上方に乖離している一方、ビットコインは深刻な売られすぎ状態にあります。
金はこの1年で80%以上上昇し、5,280ドルを超えました。資本が金に移動する中でビットコインはドル建てよりも先に金建てで弱含みとなっていました。
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なぜ金は強く、BTCは弱くなったのか
金の強さは、経済的不確実性・インフレ期待の高まり・中央銀行政策の転換という複合要因によるものです。特に世界の中央銀行(中国・インド・ロシア)が過去3年間、年1,000トン超という前例のないペースで金を購入し続けていることが大きな支えになっています。また個人投資家は平時有事構わず金への投資を続ける一方で、特に中国の投資家は資産を守る数少ない投資先が金となっています。
他方でビットコインは米国ナスダック新興株式市場との強い価格相関を維持しています。機関投資家のトレーディングデスクがボラティリティの高いナスダックとビットコインを同一ポートフォリオで管理する傾向があり、ナスダックが急落するとマージン要件を満たすためにビットコインが売られます。
ビットコインが米国ナスダックとの強い相関にあることは、これまで高騰してきた日本や韓国などの株式市場の投資参加者がそれほどビットコイン投資に積極的でないことや、中国の中央銀行や機関・個人投資家はそもそも規制されていることも大いに影響しています。
ビットコインは引き続きリスク感応型の資産として取引されており、流動性環境・レバレッジサイクル・センチメントの変化に影響を受けています。一方で金とシルバーは資本保全手段として機能し、地政学的不確実性や不均一な世界成長の中で投資家が安定性を重視していることを示しています。
今後の焦点:反転の可能性
歴史的にビットコインの弱気相場は12〜13ヶ月続いており、金建てで見ると2025年1月がピークだったため、同じパターンを当てはめると2026年2〜3月頃に底打ちし、その後回復に向かう可能性があるとMercado Bitcoinのアナリストは指摘しています。
21Sharesのデータによれば、ビットコインと金の乖離は過去最大に達しており、歴史的にはこのような局面からビットコインが大幅に上昇したケースが多いとされています。
米国のイラン攻撃や原油市場の暴騰が顕在化した2026年3月時点での構図は「リスクオフ資産(金)vs リスクオン資産(BTC)」という二項対立が鮮明になった状態です。BTCが「デジタルゴールド」としての地位を確立するには、金のような幅広い投資家へのアクセスを広げて米国株式市場との相関を断ち切ることが最大の課題となっています。
クリプト総研所長