2025年秋に5,000ドル近くまで上昇した後、半値以下に急落していたイーサリアム。2026年3月、ようやく反発の兆しが見えてきた。「上がっている」と聞く前に、まず知るべき大きな文脈がある。
最高値からの下落率
つまりいま起きているのは「頂上への登山」ではなく、「深い谷底から少し這い上がってきた」という状態です。これを正確に理解しておくことが、投資判断の出発点になります。
なぜここまで下がっていたのか? 売られた3つの理由
反発の意味を理解するには、まずなぜここまで売られたかを知る必要があります。
第一に、世界的な景気後退への懸念です。2025年後半から2026年初頭にかけて、世界経済の先行き不安が広がりました。株式市場が揺れると、ビットコインやイーサリアムのような暗号資産も「リスクの高い投資」として売られる傾向があります。金(ゴールド)のような安全資産と異なり、ETHは株の下落に連動して売られやすいのです。
第二に、ETHの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン氏が保有するETHを大量に売却したことです。プロジェクトの生みの親が自ら売るというニュースは、投資家心理に大きなダメージを与えました。
第三に、機関投資家(大手ファンドや金融機関)によるETFからの大規模な資金引き揚げです。2025年後半から2026年初頭にかけて、イーサリアムETF全体から累計2,760億円超が流出しました。大きな資金が抜けると価格は下がります。
反発の最大の理由:BlackRockが「利息付きETH投資」を解禁した
3月16日前後の価格反発の最大の引き金は、2026年3月12日に起きたある出来事です。
世界最大の資産運用会社・BlackRock(ブラックロック)が、「iShares Staked Ethereum Trust」という新しいETFをNasdaq(ナスダック証券取引所)に上場しました。ティッカーシンボルは「ETHB」。
これまでのETHのETFは「ETHを保有しているだけ」の商品でした。それがETHBでは、保有しながら同時にステーキングも行い、得られた報酬のうち82%を毎月投資家に分配します。現在の報酬率は年約3.1%です。
これは機関投資家にとって革命的な変化です。「価格が上がれば儲かるが下がれば損するだけ」だったETH投資が、「保有しているだけで定期的なリターンを生む資産」に変わったのです。
「売り圧力が少なかった」という見落とされがちな事実
価格が下がっていた期間中、ひとつの興味深い現象が起きていました。通常、価格が急落すると「早く売らなければ」と考えた投資家が取引所にETHを移します。取引所の残高が増えるのが普通です。
ところが今回は逆でした。取引所に置かれているETHの量が、過去数年で最低の水準(約1,600万ETH)まで減り続けたのです。
これが意味するのは、長期保有者たちが「今は売らない。むしろ取引所から引き出して自分で管理する」という選択をしていたということです。売りに出される物件が少なければ、価格の底は自然と固くなります。これが$1,939前後で下げ止まった構造的な理由のひとつです。
これから先、どうなる可能性があるか
投資初心者の方に正直に伝えると、今後の価格は誰にも断言できません。ただ、現在の市場が注目しているポイントはふたつあります。
強気シナリオの鍵は「$2,150〜$2,700の壁を突破できるかどうか」です。過去の売買データを見ると、この水準では多くの投資家がETHを購入したまま含み損を抱えています。価格が上昇してきたとき、「損を取り戻せた」と感じたこれらの投資家が売りに転じる傾向があります。この壁を勢いよく突き抜けられれば、次の大きな上昇が見込まれます。
一方、注意が必要なのは$1,911という水準です。この付近に、約970億円規模の「強制清算クラスター」があると言われています。
借りたお金で投資(レバレッジ取引)をしている場合、価格がある水準まで下がると取引所が強制的にポジションを解消します。この「強制的な売り」が集中する価格帯を強制清算クラスターと呼びます。$1,911を割り込むと、連鎖的な売り圧力が発生し価格が急落するリスクがあります。
イーサリアムの今回の反発は、BlackRockという世界最大の機関投資家が「ETHは長期保有に値する資産だ」と判断し、新商品を作って参入したことが最大の根拠です。これは単なる投機的な動きではなく、暗号資産が従来の金融システムに組み込まれていく構造変化の一歩と言えます。
ただし、ETHは今でも最高値から50%以上低い水準にあります。「2,000ドルに上がったから今が買い時」という単純な話ではありません。強制清算の水準($1,911)を割ればさらなる急落もあり得ます。暗号資産は株式や債券と比べてボラティリティ(価格変動の幅)が極めて大きく、短期間で価格が半分になることも珍しくない資産クラスです。